ドイツ / ミュンヘン BENTO-YA 鴨ラーメン 8.90ユーロ

人間、生きていくのに必要なものは何だと思いますか?まず思い浮かぶのはほとんどの場合、食、食べること、食事ですよね。まず第一にメシを食べないとそもそも生きていくために必要なエネルギーを確保できないし、気力活力も湧かない。食事に興味がないって人もまあいるとは思うんですが、興味はなくとも食べなければ生きていけません。どうせ食べる必要があるなら興味を持って楽しめた方がよりいいとは思うんです。

日本からドイツにやってきて間もないころ、わたしはまだこの国に慣れておらず毎日スーパーマーケットで買った食パンに細長く切られたハムをマヨネーズと潰したゆで卵を混ぜたもの(Eier schinken salad、これもスーパーで売っていて1パック250gくらいで2ユーロくらい)をのせてトーストしたものを朝・昼・晩に食べていました。知らない町、知らない言葉、そもそも知らない国でしたし、日本から調理器具などは一切持ってきていなかったので、しばらくの間は簡単に出来るものしか口にしていなかったのです。仕事先の会社がある街にはレストランやファーストフードがありましたが、わたしが住む村にはそういったものはなく、というかスーパーもなく、日本でいう田舎のタバコ屋くらいのサイズ感の個人商店しかない小さな小さな小規模な村に住んでいましたので、気軽にどこかに食べに行く、ということもままならなかったのです。

わたしは食べることが好きです。しかしなんでもいいという訳ではありません……が、この時は移住して間もない時期で、とにかく生活に慣れること、地域に慣れること、この国の文化に慣れることで手一杯だったため、食に対して非常に単調な生活を余儀なくされていました。

7月の中旬に移住して2週間が経ち、会社が夏休みに入り、まだフワフワしたわたしは何をしていいかわからないまま16日間の休みをもらってしまい、とりあえず免許の書き換えや書類関係のことを相談しに、日本国総領事館のあるミュンヘンへ向かうことにしました。

総領事館で日本の運転免許をドイツ語に翻訳してもらい、在留届を提出して用事を済ませミュンヘン中央駅方面へ。DB(ドイッチェバーン、ドイツ国鉄)のネット予約でとにかく安い往復電車を取っていたので、朝早くに村を出て昼過ぎの電車でとんぼ返りという時間的余裕がほとんどない行程でしたから、お昼ご飯も大都市ならファストフードやホットドッグスタンド、駅のキオスクで済ませてしまおうと考えていました。ついでに朝の電車は地味に遅れが発生しており、接続についても、待っていた電車が到着ギリギリで番線変更があってホームで待っていた人全員がダッシュする羽目になったりと大変だったので、帰りも不安だしさっさと帰ろうと思っていたのです。

中央駅へはあと2ブロック、というところで視界の端になにやら日本語のような文字列。店名は「BENTO-YA」。まだヨーロッパというものに慣れていなかったわたしは、てっきり日本人がやっているお弁当屋の一種で、持ち帰りのお弁当なんか買えちゃったりして、帰りの電車の中も2時間半くらい乗るしその中で食べるもの悪くないな、などと思いながらお店の中へ。

BENTO-YA 鴨ラーメン 8.90€
ドイツ/ミュンヘン Augustenstraße 4, 80333 München
日本語 不可 英語は通じる

わたしは食べるのが好きです。興味があります。特に、特にラーメンが好きです。

お弁当を期待して入ったお店の中では、地元のミュンヘンっ子やアジア人、中東系の人が揃ってラーメンを食べており、この2週間食事に対して何も考えずに過ごしてきたわたしにとっては、ある種のショックでした。ああ、そういえばラーメン食べてない。ラーメン食べれるって素敵だな。ラーメン食べよう。持ち帰りとか帰りの電車の時間とかとりあえず忘れよう。ラーメンを食べるんだ。ラーメンがいい。

物価の高いミュンヘンにおいては、8.90ユーロというのはリーズナブルな価格です。日本円にするとレート変動もありますがざっくり1,300円くらい。一般的なレストランにおいては、メインの料理は安くても10ユーロ前後はしますから、気軽に食べれて一品で完結するラーメンはとても優秀ですね。

縮れ麺に醤油ベースのスープ、鴨の照り焼きとわかめとネギのトッピング。鴨というのがちょっと珍しいですが、スープとの調和もあり美味しいです。ラーメン全体の評価としては驚くほどウマい訳ではないんですが、決して不味くはない。いい意味で、普通のラーメンでした。でも日本で食べるラーメンとは決定的に何かが違う。小さな違和感を持ちながら、それでも満足感のある一杯。結果としてわたしがこのヨーロッパで生活していく上で、どこに行ってもラーメンを食べるようになってしまったきっかけの一杯となりました。声を大にしておすすめするような店ではないですが、良い店で良いラーメンでした。ミュンヘン中央駅から徒歩5~10分程度と好立地なので、ご機会があればどうぞ。

さて。DBのウェブアプリで1本次の電車に予約変更をしたわたしはゆっくりとラーメンを食べ、悠々とした足取りで中央駅に向かい、電車に乗り、ゆったり2時間半揺られれば地元の駅につく……はずでした。

ミュンヘンを出た電車は、アウグスブルク、ウルム、シュトゥットガルト、カールスルーエの順に止まるはずなんですが、アウグスブルグを過ぎた時点で何もないところで完全停車。そのまま1時間立ち往生したのち、車内アナウンスで何やら喚いています。何だろうと思っていると電車はバック開始。来た道を引き返し、アウグスブルグに向かわずドナウウェールトという聞いたこともない街へ。ここでさらに1時間停車し、動いたと思ったら徐行、停止の繰り返し。ウルムに着いたのは予定から4時間遅れ。この後の接続も含めて全て不透明。お家に帰れたのは、結局ミュンヘンを出てから8時間後のことでした。

停車している途中、車内を巡回していた車掌さんからこんなものを手渡されました。

大幅な遅延があった場合のチケットの払い戻しや影響を受けた他の予約についての申し立て用紙です。当然、帰ってから書いて特急料金はほぼ戻ってきましたが、わたしの心には強く強く深く深く、「はやく車とか他の交通手段を得よう」「DBは信用ならん」と刻まれたのでした。まあ、この後も数年間DBには悩まされ続けるわけですが、それはまた別のお話。

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